この世の中には「より良い人生」や「自己実現」についての提案やセオリーが、
実にたくさんあります。
例えば、宗教もその方法論のひとつと言えます。
宗教の場合は、特に教義というものが存在して、
「これはやってはいけない。これはやってもいい。」
と、ライフスタイルや考え方、行動の仕方など、ありとあらゆることに
「神様との約束」と称したルールを課します。
そしてそれを守ることが、神様に少しでも近づく道である、と説かれています。
しかし、ご存知のように、ある宗教では正しいことが、別の宗教では間違った
ことになってしまうことも、山のようにあります。
例えば、ある宗教では一夫一婦制が正しいのに対して、
別の宗教では一夫多妻制が正しい。
また、別の宗教では妻帯しないことが正しいとされる。
つまり、多くの宗教が信者に対して「これが神様から課せられた
絶対のルールだ」と思わせているものに、本当は絶対的などというものは存在せず、
すべては社会や、構成する人々によって変化する
相対的なものであるということが見えてきます。
これはビジネスの世界でも同じです。
例えば、有名な「マズローの欲求段階説」という、ビジネススクールでは
必ず学ぶ説があります。これは1943年に発表されたマズローの
「A Theory of Human Motivation(自己実現理論)」
という論文に登場する人間の欲求段階を解説したものですが、
彼の説はごく少数の一部西洋人のライフスタイルをモデルにして
考えられたものであり、文化的な違いによって発生する
考え方や行動様式の差異はまったく無視されているものです。
実際、アフリカ圏やアジア圏の人にこのピラミッドを当てはめようとすると
まったく機能しないこともわかるでしょう。
つまり、このような一方的で、狭小的な視点でしか構成さられていない
セオリーをすべての社会や人々に当てはめようとすることは横暴とも捉えられ、
ひいては人類同士の無理解に発展する要因です。
例えば、第4段階の「承認の欲求」や第5段階の「自己実現の欲求」は、
オーソドックスな西洋社会流の「成功」イメージを頂点としたピラミッドに過ぎず、
この「成功」イメージは必ずしも全ての社会や文化において受け入れらるとは
限らないのわけです。
それが世の中の豊かさを形成するダイバーシティーです。
僕が若い時にパリで経験した実際の話をしましょう。
「ガール・ド・レスト(東駅)」で、友人と話をしながら歩いていると
路上生活者がお金を恵んでもらうために床に座っていたのを見かけました。
僕は彼に近づき「大変そうだから、はい」と言って小銭を投げ、
そのまま引き続き、友人と歩き続けたのです。
すると、路上生活者が後ろから追いかけてきて、
僕の肩を叩き「これは君に返すよ。そんなしかめっ面をした
無愛想な若造からもらったお金は使えない。君の元に返す。」
と言ってきたのです。
その時、はっとしました。
恐らく、自分ではそんな失礼な態度を取ったつもりは全く無かったのですが、
向こうからは、十分にそう写ったのです。
だから、これは否定しようがない。
この時の路上生活者が、たとえばかつては高等教育を受けて
それなりの社会地位を持っていたけれど、何らかの理由で落ちぶれてしまったのでは?
という見方もできますが、明らかにそういった風情の男性ではありませんでした。
余談ですが、この時から、誰に対しても、それがたとえ路上生活者であろうと、
失礼に写るような態度は二度と取るまいと心に誓った事件でした。
自分の「つもり」と相手が受けとるシグナルは、時には乖離するものです。
いずれにしても、わたしたちの人生を構成している様々な要素に対して
もっと敏感になること、そのためには何よりも自分のことを
鋭敏な感覚で日々、実感をしつづけること。
それが最も大切なことであるように思いますし、
それ以外に選択の余地はないようにも思うのです。
他所から提供されるセオリーや価値観は、あなたにとってひとつの道としての
可能性は秘めています。しかし、それが絶対であると決めつけたり、
思い込んだりすることは危険です。そんなことをすると、
自分の直感や、感性に蓋をしてしまい、知らないうちに
リスクを背負う行為に繋がります。
自分を知るためのありとあらゆる方法を学び、実践すること。
そうすることで、あちこちで提案されている
「最良の方法」「最高のセオリー」「究極の発想法」
「これさえあれば理論」などなどを鵜呑みにせずに、
その真意を理解したり、分析をして取捨選択をする力が
どんどんとついていくことでしょう。
ちなみに、マズローの欲求段階説に関しては
批判が相次いでいるにも関らず、相変わらずビジネススクールで
昔のまま教え続けているところもあります。
なぜなら、何も疑問を持たずに鵜呑みをすることが、
教える方にも、教わる方にも、楽だからです。
それを「とてもわかりやすい」「便利」という言葉でまとめてしまって。
◆◆◆
■ライフとキャリアのことなら
『デュボワ・メソッド・スクール』
◆◆◆
■都内で学べる太極拳
『WIMA:武当式太極拳・気功教室』
◆◆◆
■twitter:DuboisFrancois
■朝日新聞online 『人生を変えるカラダづくり』連載中!
■NIKKEI NET 日経 Ecolomy 連載中!
◆◆◆
【デュボワ・メソッド・ブログは、毎週木曜日更新】
◆◆◆








フランソワ デュボワ。
東京在住。
作曲家・マリンバソリストと、キャリア教育の仕事をしています。